『Under Kover Loverz』 序章  サーチライト

 高木順一朗は、とても気分が良かった。

 目覚まし時計が鳴る、ちょうど、5分前に目が覚めた事。
 久しぶりに自分で淹れたお茶に見事な茶柱が立った事。
 朝のニュースで、今日の運勢の第一位が蟹座だった事。

 そんな小さな事の重なりが、高木順一朗の行動を変えさせた。

 ――よし、今日は少し寄り道をしてみるとしようか。

 株式会社765プロダクション・代表取締役社長、高木順一朗。
 彼は今日、ある男と、運命的な出会いを果たす。


 そしてその男はアイドル達とその“力”を束ね、やがて屍山血河の闘争へと足を踏み入れる事となる――。





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 男は、公園のベンチで横になっていた。
 体中に染み渡った疲労を少しでも浅く広く伸ばせないものかと体勢を変える。
 無駄な事だとは知っていても、それでも試さずにはいられないのが人間だ。
 男は、それを誰よりもよく知っていた。

 閉じた両目の上に載せた右腕を少しだけ重力に逆らわせ、開いた隙間から腕時計を見る。
 7時42分――もうすぐか、と男が呟いた。
 男はゆっくりと体を起こすと、グレーのコートを脱いだ。
 3月も半ばだというのに、今年は、まだひどく寒い。
 だが、男はそれを十分に知った上で、さらにスーツの上着も抜いだ。
 水飲み場の水道水で顔を洗い、手櫛で髪を整える。
 いくらかくたびれた白いシャツ。その上に、ピンストライプが入った青いネクタイを締め直す。
 上着を着た。コートは、少し悩んで、二つ折りにして膝の上に載せた。
 7時49分――。

  -  -  -  -  -  -  -  -  -  -  -  -

 高木順一朗がその公園に足を踏み入れた時、視界の端に一人の男が見えた。
 遠目では、年齢の判別がつかない。大学生のようにも見えるし、30代のようにも見える。
 だが、いい目をしていた。
 理由は、それだけで充分だった。

  -  -  -  -  -  -  -  -  -  -  -  -

 男の目の前に、高木順一朗が立つ。
「ほう、なんといい面構えだ」
 高木順一朗の顔は逆光でよく見えないが、頬は上がり、声は妙に満足そうだった。
「君のような人材を求めていたんだ」
 馬鹿げてる――最初は男も、そう思った。
 しかし、それは決して気まぐれや偶然の類ではなく、やはり運命だったのだ。
 男は立ち上がり、そして言った。
「よろしくお願いします。社長」
 男が差し出した右手を、高木順一朗は強く、固く握り返した。
「我が765プロへ、ようこそ」



 その日、男は、高木順一朗に語る。
 俺は、サーチライトになりたいんですよ――と。

 

テーマ : アイドルマスター
ジャンル : ゲーム

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拍手御礼。

拍手コメ頂きました。ありがとうございます。
ご期待頂くというのは、こんなにも緊張するものですか。

内容がご期待して頂いている方向に沿っていれば良いのですが、
さて、どうなんでしょう。

この作品で私が目指すものは、ニコマスでいう所の『架空戦記』です。
ゲームの設定に半分乗っかりながら、異能力による戦闘を繰り返すお話です。
場によっては「中二」と呼ばれる方向性ですね。好き嫌い分かれるかなぁ。

ゲームとしては『アイドルマスター』のみで、他のゲームは混ぜません。
ただ、TRPGが好きな人間なので、それっぽい要素は含まれるでしょう。
律子役の若林さんも『ダブルクロス』をプレイしてる事ですし。
http://www.fear.co.jp/dbx3rd/
http://www.fear.co.jp/dbx3rd/about/about_de01info.htm

> そしてその男はアイドル達とその“力”を束ね、
> やがて屍山血河の闘争へと足を踏み入れる事となる――。

これは、芸能界でのオーディションやサバイバルという意味ではなく、
まんま、「そういうお話」になる予定です。
他の色々と並行しながら、続けていきます。

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プロフィール

ガルシアP

Author:ガルシアP
◎レッガー=●カブキ=カブトワリ

twitterでは “ gar_cia_P ”。

SS書いてましたが、
動画も始めて3年経過。
こちら、デビュー作です。


360版からアイマス界に参加。
ゲームもCDも中の人達も、
ニコマスもSSも、大好き。

Web-:http://garciap.web.fc2.com/
mail:underkoverloverz◆gmail.com

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