『Under Kover Loverz』 第一章  蜘蛛の糸 - 01

 
 
      [ image scene ]



 少女はゆっくりと右足を前に出す。
 風は、その幼さの残る体を止めようとしたが、地面から吐き出された重力が少女を絡め取る。

 落ちた。

 少女の体は風を裂き、52mを落下する。
 12階建てのビルの屋上から、黒い大理石のタイルの上へ――。

 少女には、生き残る術があった。
 だが少女は、自ら死を望んだ。

 夜の街の片隅で、一輪、赤い血の花が咲いた。




UKL.png
 
 
  spider_line.png




      [ pre act ]



 ダンッッ!
 しなやかな掌が、ミーティングルームの厚いテーブルを叩く。
 その音は、部屋の反対側に立つ2人の男の耳にも響いた。
 秋月律子は、眼鏡のレンズ越しに一度きつく睨み付けると、空いた左の拳を腰に当てる。
「私は認めないわ。突然現れて『プロデューサーだ』なんて、絶対に」
 秋月律子は、765プロで事務員をしながら、マネージャーを、そしてプロデューサーを目指していた。
 今でこそ一線を退いたとはいえ、高木順一朗は、超一流のプロデューサーだ。
 そして、彼の『経営方針』も、彼女の理想に近かった。だから、765プロに入ったのだ。
「大体、あなたの名前なんて聞いた事ありません」
 都内の――という事は、ほぼ国内全ての――芸能事務所の勢力図は頭に入れている。
 アンダーグラウンドな事務所や、まだ小さな新興プロダクションは把握しきれないにしても、だ。
 どの道、彼がプロデューサーとしての実績を持っていないのは確実だった。
 プロデューサーと紹介された男は、表情を変えずに右の掌を挙げる。
「君に認めてもらう事が、卒業試験だと思っておくよ」
「……卒業?」
「ああ。新米プロデューサーの、卒業試験だ。後日、試験官をお願いする」
「バカバカしい」
 嘲笑4割、苦笑6割の表情を残し、秋月律子は背を向けて、会議室から出て行った。
 後ろに立っていた菊地真が体をひねり、道を空ける。2人の視線は、一度も絡まない。
「いや、実に珍しい事だ。律子君は、ああいうタイプではないんだが……」
 高木順一朗は少し困惑したように小声で言った。男は、閉じられた扉を見詰める。
「役割を二度完璧に果たせば、認めてもらえます」
 その声に、感情の乱れは無い。そして男は、会議室に残った四人のアイドルに頭を下げた。
「明日から、君達のプロデューサーを務めさせてもらう。改めて、よろしく」
 それぞれの反応は対照的で、そしてそのどれもが、男の苦笑を誘った。





      [ meeting ]



 暗い会議室の中、モニターの中の情報だけが次々に切り替わっていく。

 真田優香 [Sanada Yuka] ―――03月04日(木)死亡。死因:ビル屋上からの転落。
 柏木真緒 [Kashiwagi Mao] .――03月12日(金)死亡。死因:一酸化炭素中毒。

「2月の3名と合わせて、5人の少女が死んでいる。全員が自殺。これは異常事態だ」
 高木順一朗の指示の下、音無小鳥は必要な情報を全て提示していく。
 プロデューサーは、その少女達の所属を確認する。
 ――リアーヌ・プロダクション。
 5人全員が、同じ芸能事務所のアイドル候補生だった。
「設立は1年前。代表はプロデューサー兼務の八代敬一、41歳。所属アイドルはCランク1名、Dランク1名です」
 音無小鳥が、必要な情報だけをピックアップして読み上げる。
「君の初陣としては、丁度いい相手かもしれないな」
 高木順一朗は、2人のオーディション履歴を確認しながら呟く。
 しかし、プロデューサーの表情は硬かった。
「トリオで行きます」
「3人必要かね? まぁ、コミュニケーションを図る、という事なら――」
 高木順一朗の声を遮るように、プロデューサーは編成を決定する。
「Visual、美希。Dance、真。Vocal、千早で」
 小鳥が小さく息を呑んだ。
 確かに間違いの無い編成だが――と、高木順一朗は首をひねる。
「リアーヌには、手強い相手が潜んでいます」
 プロデューサーは、記憶の中の、やけに赤い唇を思い出していた。
 


                                                       [ 続く ]

テーマ : アイドルマスター
ジャンル : ゲーム

コメントの投稿

非公開コメント

物語が

静かに動き始めた、そんな予感を存分に醸してますね。
突然やってきたPを認められない、りっちゃんの頑迷さも今後のキーワード?
今後の展開が楽しみです。

御礼。

> 静かに動き始めた、そんな予感を存分に醸してますね。

ここからは世界観(特にアイドルとは何か)を提示しつつ、
765プロの現有戦力と敵事務所との闘争がスタートします。


> 突然やってきたPを認められない、りっちゃんの頑迷さも今後のキーワード?

律子さんは、キープレイヤーの1人ですね。
高木順一朗の傍らに音無小鳥が在るように――。


> 今後の展開が楽しみです。

『蜘蛛の糸』とその次、もう1つ次までは流れ、イメージが出来ているので、
あとはちょっと書ける時に書いて、短くてもUPして行きます。
その内、まとめを作らないと分かりにくくなるでしょうね。考えないと。

検索フォーム

プロフィール

ガルシアP

Author:ガルシアP
◎レッガー=●カブキ=カブトワリ

twitterでは “ gar_cia_P ”。

SS書いてましたが、
動画も始めて3年経過。
こちら、デビュー作です。


360版からアイマス界に参加。
ゲームもCDも中の人達も、
ニコマスもSSも、大好き。

Web-:http://garciap.web.fc2.com/
mail:underkoverloverz◆gmail.com

最新記事
最新コメント
カテゴリ
リンク
ドミノ・ピザ最高!
ドミノ・ピザ【PC向けサイト】
アクセスカウンター
最新トラックバック