スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

1時間SS『思わせぶりに』

whiteA_small.png  ・06/03 テーマは「吸血鬼」「次回予告」「すいか」「邁進」。
                                 テーマアイドルは「秋月律子」「四条貴音」。





 四条貴音。
 765プロ所属のアイドル。
 身長、公称で169cm。体型は実にグラマラス。
 銀髪、としか表現できない髪の色と、赤い瞳。
 その雰囲気は、まるで雪女か吸血鬼のようだ。
 何もかも日本人離れしているが、一応日本人らしい。
 ……そう、一応。
 
 

「Kein Mensch ist ohne Fehler.」
 貴音は振り返る。不思議そうな顔で考える。
「秋月律子、何か言いましたか?」
 いつも通りの整った顔立ち。見当のつかない彼女の生い立ち。
「ああ、ごめんなさい。ちょっと、語学の勉強中で」
 用意してあった誤魔化し。作り笑いのまやかし。
「なるほど、秋月律子は勤勉なのですね」
 私の企み。貴音の微笑み。

 ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語。
 特にこれといった反応は無い。
 母国語はやはり日本語なのだろう。
 あるいは、全てお見通しなのかも。


 社長も、詳しい事は話してくれない。

 誰も、詳しい事を知らない。


 貴音について、他のみんなに質問をしてみる。

 歌が上手い。
 背が高い。
 胸が大きい。

 いつもラーメン。


 ……そう。貴音はやたらとラーメンを食べたがる。

 不思議に思って、聞いてみた事がある。
 なぜ、そんなにラーメンが好きなの? ――と。


「このような美味がある事を、私は存じ上げず……」


 ……そう。どうやら、そういう事らしい。

 この日本で、ラーメンを知らないまま、18歳になれるだろうか?

 色々な話を振っても、ほとんど付いて来ない。
 流行歌やアニメ、バラエティ番組を知らない。
 遠足、運動会、給食の話題に全く混ざれない。


 空白。――あるいは、ブラックボックス。


 それが魅力だ、という人もいる。
 アイドルとしては、その通りかもしれない。
 けれど、それが同僚となれば話は別だ。


 そんな事を考えながら、私は、銀色に光る刃を手に取る。
 この長さなら――。


 タン、と音を立て、銀色の刃がそれを真二つに切断した。
 粘つく赤い液体が流れ、真っ赤な断面が空気に触れた。
 給湯室の中で一番大きな皿に、1/4玉のスイカを載せる。
 残りは、みんなが帰ってきたら食べるだろう。
 それを運ぼうとして――ふと、棚の小瓶が目に映った。


「これは、何ですか?」
 貴音が不思議そうな顔をする。
「スイカよ」
「ええ、それは知っていますが、この調味料は?」
「スイカにかけたりしない?」
 そう言って、私は貴音にスティックシュガーを渡してみた。
 貴音はしばらくそれを見つめると、一番上をねじ切った。
「秋月律子も、普段、スイカに砂糖を?」
 急な問いかけに、つい。
「ああ、うちの実家の方では、割といつも、ね」
「では、お先にどうぞ」
 そう言って、貴音は砂糖を、私の分のスイカにかけた。



「秋月律子は、私とは相容れないのでしょうか」
 貴音が、塩を振った自分のスイカを食べながら聞く。
「そういう訳じゃ、ないのよ」
 私は、砂糖のかかったスイカを食べながら答える。
「他の皆は、私を、あるがままの私として受け入れてくれます」
「まぁ、確かに。余計な詮索は、誰もしてないわね」
「ですが、あなたは――」
「好きだから、全部知りたくなるのよ」
 言ってから、少し、後悔。
 貴音の表情は、まるで恋する乙女のようだった。
「秋月律子。今、なんとおっしゃいましたか?」
「違う、違う! そういう意味じゃないわよ」
「いいえ、構いません。もう一度、言って下さいませ」
「構う! こっちが構うわよ! アイ・ライク・ユー!」

 たった一振りの塩で、
 スイカの甘さは、グッと引き立つ。
 そう、砂糖を掛けても、甘くはならない。
 これはとても不思議な事で、でも、実は当たり前の事かもしれない。

 スイカはとても甘いのだ。
 私達は、もっと甘い物に囲まれているから、それに気付けないのだ。
 だから、塩で一度、舌をリセットしてやればいい。
 そうして初めて、スイカの本当の甘さに気がつけるのだ。

「秋月律子は、私の事が知りたいのですね?」
「そりゃ、謎の人物と一緒にいるのは、気持ち良くないもの」
 貴音が、私のスイカに一振り、塩をかける。
「気持ち良い方が、お好みですか?」
「違う、違う! そういう意味じゃないわよ」

 はて、と貴音が不思議そうに首を傾げた。
「どの様な意味か存じませんが……」

 貴音が、自分の唇についた赤い液体をペロリと舐める。

「時間を掛けて、お互いに理解を深めて参りましょう」


 四条貴音。
 765プロ所属のアイドル。
 身長、公称で169cm。体型は実にグラマラス。
 銀髪、としか表現できない髪の色と、赤い瞳。
 その雰囲気は、まるで雪女か吸血鬼のようだ。
 何もかも日本人離れしているが、一応日本人らしい。
 ……そう、一応。

テーマ : アイドルマスター
ジャンル : ゲーム

コメントの投稿

非公開コメント

こんにちは。
一番思わせぶりなのは冒頭のテーマかも?「きゅんっ、ヴァンパイアガール」も意識しているのでしょうか。
読後感が最高に良いです。言葉遊びも散りばめられ、すっきりとまとまった短編でした。流石です。
そういえばお姫ちんの設定って全然公開されてないですよね。
最近地の文を書いていないので、逆に地の文の力に気づくようになった気がします。ガルシアPさんのような、簡潔かつ魅力的な地の文が書けると良いですね。一気に作品がしまります。

それと、先日は拙作を読んでいただきありがとうございました。
ここに書いた効果かはわかりませんが、若干コメントも増えてきました。
元々VIPよりはマナーの良い、逆に言えばコメントのつきにくい環境ですので、割り切ってこれからも書き続けて参ります。

それではまた。

御礼。

南嵐茶真さん

こんにちは。
今回はテーマに「吸血鬼」でテーマアイドルに「貴音」だったので、
『きゅんっ、ヴァンパイアガール』は外せない感じでした。
好評頂けて、嬉しい限りです。
実際の所、1時間SSといいながら1時間20分くらいかけていますが、
それでも終わって読み直すと、「ああ、ここをもう少し」みたいな点が
いくつか出てしまいますね。
そのもどかしさ、不完全さ、反省も含めて、1時間SSの魅力です。

貴音の設定は、オープンにならないでしょうね。
小鳥さんの過去や愛ちゃんのパパと同じくらい、
公式が提示した「ネタの宝庫」なんだと思います。
設定はあるけど正解は無い。だからどう遊んでも良いよ、全部正解。みたいな。

地の文の有無は、場所や作品の方向性で色々有利不利があるのだと思います。
全局面に対応できれば最高ですが、せめて得意分野は作っておきたいですね。
私は逆に、会話文だけだとものすごくギクシャクしてしまいます。感覚的に。

南嵐茶真さんの作品はとても大胆な組織改変が行われていて楽しいですね。
『色黒の社長の話。』も未来改変物なので、見比べると色々と楽しいです。
「お、このキャラをこう使うか!」みたいな差異や着眼点の違いが。
これからも色々な形でアイマスSSが流行っていくといいな、と思います。
連載、頑張ってください。りんちゃん、可愛いです。

検索フォーム

プロフィール

ガルシアP

Author:ガルシアP
◎レッガー=●カブキ=カブトワリ

twitterでは “ gar_cia_P ”。

SS書いてましたが、
動画も始めて3年経過。
こちら、デビュー作です。


360版からアイマス界に参加。
ゲームもCDも中の人達も、
ニコマスもSSも、大好き。

Web-:http://garciap.web.fc2.com/
mail:underkoverloverz◆gmail.com

最新記事
最新コメント
カテゴリ
リンク
ドミノ・ピザ最高!
ドミノ・ピザ【PC向けサイト】
アクセスカウンター
最新トラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。