1時間SS『時計が0時を指す頃に。』

whiteA_small.png  ・12/23 テーマは「シンデレラ」「アイドル」「クリスマス」「最終」。

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『時計が0時を指す頃に。』




  少女A


 23時55分、普通・川越行き。
 これが、私の乗る最終電車だ。

 ちょっと急げば、2本前の快速にも乗れるのだけれど、
私は2本見送り、最終に乗る。
 理由は、この駅が始発なので、確実に座れるから。
 それと、もうひとつ……

 深夜0時を過ぎ、赤羽を過ぎた辺りから、
少しずつ空席ができ始める。そんな車内で、
私は視線を左右に走らせる。

 一つ隣の車両に、その姿を見つけた。
 私はそっと席を立ち、揺れる床板の上を渡る。




  
  アイドル・天海春香


 23時55分、普通・川越行き。
 これが、いつも私の乗る最終電車。

 もう少し早く帰れればいいんだけど、最近は忙しくて、
たまに乗り遅れちゃった日なんかは、千早ちゃんの家に
泊めてもらう事もある。
 それはそれで、楽しいけれど……

 ほとんど駆け込み乗車に近い形で飛び乗って、
もちろん座れる訳もなく、私は車両の端に立つ。
 イヤホンで耳を塞いで、15分、20分。
 赤羽を過ぎた辺りで何人かが席を立つ。
 目の前の人が立ってくれたら、その日はラッキーデイ。

 帽子と眼鏡のずれを直して、イヤホンで耳を塞ぐ。
 気付いている人も、いるかもしれない。
 でも、こうして目を閉じれば、誰も話しかけてはこない。
 これが私の小さな世界。
 数十分の、私だけの世界。




  
  少女2人

 
 最初に気付いたのは、いつ頃だったろう。
 この最終電車の、6両目辺りに、彼女が飛び乗ってくる。
 歳なんてほとんど変わらないのに、彼女はアイドルだ。

 きっと、私とは全然違う日常を過ごしているんだろう。
 きっと、彼女の見る景色はキラキラと輝いているんだろうな。

 そんな事を思いながら、目を閉じて音楽に沈む彼女の姿を眺め、
ただ遠巻きに立っていたり、向かいの座席に座る事しかできなかった。

 けれど、今日は違う。 

 今日からの私は、違う。




  
  ライバル・天海春香


 小さく右肩を叩かれた。
「えっ?」
 口をついて出た声。イヤホン越しに聞こえる自分の声。

 右肩に乗った手のご主人様を見た。
 栗色の髪をすっぽり覆うように、赤いフードを被った子。
 赤いパーカーには雪のような模様が入っていた。

「はじめまして。天海、春香さん」
「はじめまして。赤ずきんさん」

 名前を知らない女の子。
 でも、何度か見かけた事はある。
 電車の中で、いつも退屈そうにしながら、ふとした瞬間、
こっちに視線を送ってくる女の子だった。

「アイドルって、楽しい?」
「う、うん。大変なことも多いけど」

 そっか。やっぱり楽しいんだ――そう呟くと、ふっと笑った。

「私、キタミ、ユズ。今日、スカウトされたんだ」
「アイドルに?」
「そう。クリスマスロードのイベント会場で」
「私、今日そこでお仕事だった」
「うん。見てた」

 握手――少女が、ユズが右手を出した。。
 春香は、それに応じた。

「ありがと。センパイ」

 そう言って、ユズは手を振り、向かいに座る。
 昨日まで、一般人だったユズは、今日からアイドルで、
昨日まで越えられなかった線を、今日は越えてきた。

 ああ、そうか。

 今まで意識した事は無かったけれど、私達の後に続こうと、
私達を追い越そうと、どんどん新しいアイドルがやってくる。

 それを、私は嬉しい事だと思った。

 これまで、線のむこうとこっちだった関係が、変わる。


 なら、いいよね?


 私はイヤホンを耳から外すと席を立ち――、

「隣、いいかな?」

 ――ユズの隣に座る。



「聞かせて欲しいんだ。あなたの夢を」


 きっと、この子もシンデレラになれるはずだから。




                                     【 完 】





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【喜多見 柚】
プロフィールコメント:
「へへっ。何か面白いことないかなーと思ってぶらついてたら、
 アイドルにスカウトされちゃうなんてね!こんな面白いコト、そうそう無いよね?
 アタシ、実はラッキーだったのかな!なーんて!へへっ!」


モバゲーのアイドルマスター・シンデレラガールズを始めました。
ソーシャルだからとか、モバゲーの運営だからとか、忌避したくなる人の思いも分かります。
ただ、その一方で、私たちは765プロのアイドルの事を知りすぎているなぁ、と気付きました。
2になって、設定が多少変わっても、彼女達の本質は変わりません。
出会ったその瞬間、私たちは彼女達の良き理解者、親身なプロデューサーになる自信がある。
でも、シンデレラガールズで出会う新しいアイドル候補生達については、何も知りません。
名前と顔すら、なかなか一致しない。
だからこそ、ほんの一言のメッセージに、新たな発見があります。
「ああ、この子にはこんな一面もあるんだ」って。

芸能界の事なんて、何も知らない。夢見ていた、あるいは想像もしていなかった彼女達。
ある娘は不安そうに自分には無理だと言い、ある女性はプロデューサーのお手並み拝見、と微笑む。

ゲームのアイマスで、初めてプロデューサーになった頃を思い出しました。
お金使わなくてもかなり楽しめるので、個人的には、オススメします。

テーマ : アイドルマスター
ジャンル : ゲーム

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プロフィール

ガルシアP

Author:ガルシアP
◎レッガー=●カブキ=カブトワリ

twitterでは “ gar_cia_P ”。

SS書いてましたが、
動画も始めて3年経過。
こちら、デビュー作です。


360版からアイマス界に参加。
ゲームもCDも中の人達も、
ニコマスもSSも、大好き。

Web-:http://garciap.web.fc2.com/
mail:underkoverloverz◆gmail.com

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