『ニコマス』06 『【アイドルマスター】“VERGE” PV【律子】』

サブタイトル 「アイドルとプロデューサー」後編


「俺は、新任のプロデューサーだ。
 今日から、キミの面倒を見ることになった」

――あの日、彼女にそう言ったアンタは、本当に彼女のプロデューサーだったのかい?

いやいや、そう最初からケンカ腰になられると、こっちも困るんだがね。
ちょっと、思い出してみて欲しいんだ。
彼女がデビューしたての頃、作曲家の先生の所へ、挨拶へ行っただろう?
彼女、意外に緊張するタイプだから、きっとすごく、初々しかったろうねぇ。
アンタ、憶えてるかい?

ああ、悪い悪い。そりゃ憶えてるよな。美しき思い出の1ページだ。
それは大切に、胸の内にしまっておいてくれ。
ただ、本題はそこじゃなくてさ。


その週、「他の6日間」、彼女は何をしていた?


デビュー前の大事な時期だから、レッスンをしていた? 本当に?
じゃあ、なぜ立ち会わなかったんだい。大事な時期だったんだろう?
アンタはあの週、「レッスン」は、していないはずだ。

大事な時期、って言ったな?
なのに、なぜ、アンタは、1週間の内、たった1日しか会わなかったんだ?
え? 「会っていたはず」? 「普通、プロデューサーというのは」?
えらく他人事みたいに言うじゃないの。記憶に無いのかい? やっぱり、別人か?

アンタはいつだってそうさ。
レコーディングも、雑誌取材も立ち会いはするが、それっきりだ。
アンタはいつだって、1週間の内の1日しか、彼女を見ていなかった。
1日だって、営業やレッスンが終われば、あとは夜まで待って、はいサヨナラだ。

混乱させてしまって、悪いかな。
もう少し、分かりやすく言おうか、自称プロデューサーさん。


結局アンタは、ゲームの外側の人間なんだ。
ゲームの中のプロデューサーとは、別人――だろ?


彼女の一週間は、アンタにとって、何分間の話なんだ?
アンタは彼女を1年間プロデュースしたと言ったよな?
それは……、アンタにとって、何時間の話なんだ?

彼女も心の底じゃ、アンタと同じ時間を過ごしたがってるぜ?


  私達は繰り返す。
  何度もプロデュースをし、彼女の笑顔を少しでも多く、長く、見たいと願う。
  いや、笑顔だけじゃなくて、悔しい想いも、怒った顔も、切ない気持ちも全て、
  この手で、受け止めたいと思っている。
  それでも私達は、この定められた運命の輪の中で、必死に足掻くしかないんだ。
  彼女の1週間を全て見たいと思っても、彼女の1年間を全て見たいと思っても。
  そして、彼女自身がそれを望んでいたとしても。



livE! 生きていたい 願いが叶うまで
壊れても 汚れても 生まれ変わっても信じて

livE! 叶えたい どんな手でもいいの
何故…私は産まれたんだろう…
何の意味があるんだろう…
探してる…
                                        「livE」(作詞:yura Dark 歌:秋月律子)



彼女の願った夢が、ここに結実する。
終わりのないメビウスの輪に、鋏を入れようとする彼女の手に、
私達は、私達の手を添えよう。


    もし可能ならコメントを消して、ヘッドホンかイヤホンをして見てく頂ければと。
    映像美、ダンスと衣装の選択、文字の印象。
    途中までは、それ「だけ」で構いません。PVとしての完成度も、素晴らしいのですから。
    けれどラストシーンでは、どうか彼女の「想い」を受け止めて下さい。



【アイドルマスター】“VERGE” PV【律子】 by えびP

1度目では雰囲気に呑まれ、情報量の多さに、脳が追いつきませんでした。
2度目は歌詞と文字に焦点を当てて、拝見しました。
2:07からの語りと字幕。
曲名。
そして、最後の最後に、画面右下に記される英文のメッセージの意味――。



泣くことなら たやすいけれど
悲しみには 流されない
恋したこと この別れさえ
選んだのは 自分だから
                                        「蒼い鳥」(作詞:森 由里子 歌:如月千早)



53週の後に、あるいは62週の後に全てを失い、しかしまためぐり会う事が約束された運命。
予定調和の輪の中で、笑顔と絆を求めて、四季を渡り思い出を紡ぐ日々。
それは、間違いなく素晴らしい理想郷なのかも知れない。

それでも私達は、禁断の果実に手を伸ばし、知恵を持ってしまった。
楽園を追われる事になっても、彼女の手を離さないと決めたのだ――。


私達は、繰り返しの外の物語も見たい。
幸せな春香とプロデューサーの姿を見たい。
世界でも通用する歌姫となった千早を見たい。
プロデューサーとして活躍する律子を見たい。

そのプロデューサーの想いの束が、私達に素晴らしい二次創作を与えてくれている。
「公式」と呼ばれるものが美しい楽園であり、侵してはならない聖域だとしたら、
「非公式」と言うべきニコマスや同人は、ひどく混沌としたあり様の地上だ。
軽薄な笑いやドロドロとした欲や、時に目を背けたくなるようなものもあるけれど、
それでも光り輝くものがあり、吐息や鼓動を、どこよりも強く感じることがある。

どちらが良いとか、悪いではなく、今や、全てひっくるめてアイドルマスターだ。
プロデューサーは、それを認めた上で、選択していけばいい。
自分のアイドルが、最も輝くステージと、最も魅力的に映る瞬間を創って行こう。
そして、この混沌とした地上を、洪水で沈めてしまう力を持ちながら、
それをしない心の広い神への感謝だけは、忘れずにいよう。

プロデューサーである事に、誇りを持とう。

高木社長の名に誓い、全てのアイドルに幸福を――。



「アイドルとプロデューサー」
前編:『ニコマス』03 『アイドルマスター 「魔法をかけて」』
中編:『ニコマス』04 『アイドルマスター 君の知らない物語 秋月律子』

テーマ : アイドルマスター
ジャンル : ゲーム

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No title

ありがとうございます。
この作品を作ってよかったと思いました。

我々ニコマスPは、その見えない回廊の外に思いを馳せて生きる者なんです。
その気持ちは努々忘れてはいけないことだと改めて思います。

返礼。

初めてこの作品を拝見した時に受けた衝撃は、
今も心の深い部分を揺らし続けております。

私達の手で、解釈で、想像で、「世界」は広げられるんだ、と感じました。
声無き声を拾い、姿無き姿を投影する事は、
もしかしたら彼女達の願いを叶える事に近いのかもしれない、と。

自分も何かを表現したい、と痛切に感じた瞬間でした。
こちらこそ、改めて。 ありがとうございます。

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プロフィール

ガルシアP

Author:ガルシアP
◎レッガー=●カブキ=カブトワリ

twitterでは “ gar_cia_P ”。

SS書いてましたが、
動画も始めて3年経過。
こちら、デビュー作です。


360版からアイマス界に参加。
ゲームもCDも中の人達も、
ニコマスもSSも、大好き。

Web-:http://garciap.web.fc2.com/
mail:underkoverloverz◆gmail.com

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