『企画』01 『@ClubNights』09



第四話 『そして、幕は上がった』


 【12月4日、夜。19時02分】

 照度の低い古びたスポットライトが消えると、春香の姿は店内の闇に溶ける。
 消えゆく音。去る音の袖を掴むように、ドラムの音が入る。
 ――タタンッ。
 その瞬間、曲調が変わる。もう1つのスポットライトの中に、伊織の姿が浮かび上がる。
「Resort Love, Love――」
 春香の届けた夏の残り香が、伊織の声でその息を吹き返す。
 店内は、どこか暖かな空気に包まれ、知らず知らず、曲を聴く者の口と心は軽やかになっていた。
 ――春香と私。最初は持ち歌で、完璧に仕上げるわよ。色は、夏!


「お疲れ様、春香。素敵だったわよ」
「本当に!? いやぁ、千早ちゃんに言われるとなんだかとっても嬉しいなぁ」
 春香の額に、一粒、二粒と汗が浮かぶ。
 店の外は寒く、店内も高い天井のせいでそれほど優れた空調が整っているとは言えない。
 だが、店内は、そしてステージは熱かった。
 お客さんの熱気。演奏する奏者達の熱意。歌うアイドル達の情熱――。
 それらを吸い上げて、まるでこの店が、鼓動を始めたようだった。
「春香は喉のケア。ちょと飛ばしすぎだったわよ」
 律子がホットカクテル用のタンブラーグラスを差し出した。
「え? お酒、ですか? 私まだ、18歳未満なんですけど……」
「日本でお酒は20歳から。アルコール勧める訳ないでしょ。ホットゆずかりん、ノンアルコールよ」
 受け取り、そっと口を付けてみる。
 酸味と、優しい香り。そして甘味が、喉を優しく包んでくれた。
「これ、美味しいですね」
「このお店に、これが大好きな常連さんがいるんですって」
 律子は、客席の奥で目を閉じ、歌に聞き入るオーナーの姿を見ていた。

「きっと、期待に応えてみせますよ――」


 店内に広がる静かな拍手。
 その拍手は5万人の歓声とは違うけれど、
 伊織は確かな達成感を感じていた。
 ―― 覚悟しなさいよ、律子。アンタの歌、頂いちゃうんだから!


 ホットゆずかりんを飲み干した後、春香は小さく呟いた。
「あ――、私っ、拍手してもらってない!」


 夜は、始まったばかり。
 そして、第二の幕が上がる――。


                                                           【続く】
『ClubNights』10  第五話『星と雪』


※このストーリーは企画の公式ストーリーではなく、当ブログでのイメージSSです。
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Author:ガルシアP
◎レッガー=●カブキ=カブトワリ

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SS書いてましたが、
動画も始めて3年経過。
こちら、デビュー作です。


360版からアイマス界に参加。
ゲームもCDも中の人達も、
ニコマスもSSも、大好き。

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mail:underkoverloverz◆gmail.com

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