『企画』01 『@ClubNights』12



第七話 『私達の答』


 【12月4日、夜。22時00分】

 しずかな音。
 水のなかをたゆたうような音。
 やすらぎの空間と眠りゆく宵闇の時間――。

 今まさに、わたし達の夜も、終わろうとしている。
 それは、このお店の歴史の終わり。
 私達は、それを、そっと――。


 ……違う。


 私達は、その為に呼ばれたんじゃない。
 私達は、ベビーシッターでもなければ、家政婦でもない。

 私達は、アイドルなんだ。

 私達が見せる夢は、安らかに眠るための夢じゃない。
 明日に向かって、笑顔で生きる為の夢よ!



「目と目が逢う――」
 その瞬間、律子の声が弾けた。
 ―― 走りすぎだ、律子!
 プロデューサーは、打ち合わせと違う歌の入りに戸惑っていた。
 静かに入り、低い音量で『聴かせる』のが律子の目的だったはずだ。
 それなのに。
 ステージまでは約15m。オーディションの時のサインなら、この店内の暗さでも届くはずだ。
 そう思い、椅子から立ちあがろうとした瞬間、
「素晴らしいですね。彼女達は」
 そう、声が聞こえた。
 ボックス席の向かい側に、1人の男性がいた。
「あなたは、今回の……」
 今回のイベント、『Club Nights』の仕掛け人であり、楽曲のアレンジを手がけた男性が、そこにいた。
「いや、しかし今の律子は少し、なんというか、その」
「気付いてくれたんですよ」
 企画プロデューサーは、ステージ上で歌う秋月律子の姿を見ていた。

 その女性は、会場全体に目を配りながらも、フレーズの最後では、必ず一ヶ所に視線を戻していた。
 客席の奥。闇の中に佇む年老いた男性へと。


 ――目と目が逢う瞬間、『好きだ』と気付いた。


 そうだ。
 オーナーは、この店を無くしたい訳じゃない。
 そんな事は、初めて会って、その目を見た時から気付いてた。
 オーナーこそが、誰よりもこの店を『好き』なんだもの。

 オーナーが求めているのは、子守唄なんかじゃない。
 まだ行ける、頑張れると背中を押してくれる応援歌なんだ。
 それに、誰よりも早く気付いたのが、企画プロデューサーだ。
 その企画プロデューサーの想いを、私達は、届けなきゃいけないんだ。

 だから、私はこの歌を、優しく静かに歌ったりしない。
 精一杯の気持ちを込めて歌おう。


 私達も、気付きました。あなたの気持ちに――。
 だから――。


 目を、逸らさないで。






 【12月4日、夜。22時04分】

   Pain ――。
   見えなくても、声が聞こえなくても――。


 美希の声は、どこまでも優しく、どこまでも伸びやかに、その空間を満たしていった。
 少女のように純真で、時に大人の女性の色香を垣間見せながら。
 律子のような思考と推測の積み重ねではなく、ただ純粋な感覚で、美希は気付いていた。
 この店は、まだ役目を終えていないと。


   抱きしめられた温もりを今も憶えている――。


 この空間には多くの人の温もりがあり、この店には多くの想いが詰まっている。


   この坂道を登る度に、あなたがすぐそばにいるように――。
   感じてしまう私の隣に、いて、ふれて欲しい――。


 この店を必要としている人は、まだたくさんいる。
 だから、そんな想いを、裏切ってはいけないんだと思う。

 美希の声はどこまでも優しく、どこまでも純粋で、どこまでも、どこまでも。
 その声は、律子が開いた老人の心の扉に我が物顔で入り込み、居座ってしまった。

 どうしてお店をやめちゃうの?
 どうして続けていけないの?
 どうして諦めちゃうの?

 ねぇ、どうして?


   そばにいると約束をしてくれた、貴方は、嘘つきだね――。


「嘘なものか……」
 その声は、会場の拍手に包まれ、誰の耳にも届かなかった。


 ただ1人。

「嘘な、ものか……」

 その言葉を発した老人の、胸の奥の、深い所に沈んでいった。

                                                           【続く】

『ClubNights』13  第八話『歌声は、全てをこえて――』


※このストーリーは企画の公式ストーリーではなく、当ブログでのイメージSSです。
  また、他のブログに掲載されるSSと設定等で差異があります。ご了承下さい。

※公式は、こちら!
clubnights
 

テーマ : アイドルマスター
ジャンル : ゲーム

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No title

大遅刻して、やっと全曲聴いて、
で、此方も読ませて頂きました。
リアルタイムに参加できなかったことがマジに悔やまれますw。

・・・此方のマスターにも火が点いてしまったようですね。
完結、楽しみにしています。

御礼。

コメントありがとうございます。
当夜、チャットしつつ本編動画を聞くのが約5分。
色々な人の意見やコメントからイメージを膨らませるのが10分。
動画の時間軸にあわせて分数計算するのに5分。
そこから約30分でSS書いて、10分以内にUP、で次の動画へ――

みたいなサイクルで当日、リアルタイムに書いておりました。
こんな経験なかったので、とても楽しかったです。

動画の中の時間と作中の時間も合わせているので、
音楽を聴きながら読んでくれる方がいたら嬉しいなぁ、と思います。

最後も、しっかりとまとめないといけませんね。

No title

改めてお疲れさまでした。

リアルタイムで書いていたというのは凄いなぁ

動画とSSを一緒に見ていると、まさにガルシアさんが
描かれていたような物語があったのかなって思います。
どんな形であれ、@ClubNightsを見た人が物語を感じる事が出来ていたら良いですね。

GJ!

返礼。

色々とありがとうございます。
チャットしてる最中に「誰かリアルタイムSSを書くんだ!w」みたいな
声が聞こえたので、吟遊詩人の名に恥じぬよう、名乗りを上げてみました。

ストーリーとしては事前の第一話からの続き物になるのですが、
リアルタイム更新分では特に主役も視点もバサバサと切り替わるので、
読む方の好みは割れるかもしれません。
目まぐるしい感じが、スピード感になれば幸いですが……。

あわただしく書いていた割には自分の中で一本に繋がったので、
最後まで、しっかりと書けると思います。
他のブロガーの皆様のように、興奮冷めやらぬタイミングではないですが、
ちょっと一息ついた所で、振り返れる材料になればいいなぁ、と思います。

あと2話ですね。
『Club Nights』当日の夜のお話と、後日談です。多分。

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プロフィール

ガルシアP

Author:ガルシアP
◎レッガー=●カブキ=カブトワリ

twitterでは “ gar_cia_P ”。

SS書いてましたが、
動画も始めて3年経過。
こちら、デビュー作です。


360版からアイマス界に参加。
ゲームもCDも中の人達も、
ニコマスもSSも、大好き。

Web-:http://garciap.web.fc2.com/
mail:underkoverloverz◆gmail.com

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